スペシャルマンはいつだって僕のヒーローだった

キン消しの話。

幼少期、まだ練馬区光が丘にショッピングセンターIMAができるよりも前の時代、町内にはテントやプレハブが立ち並ぶ小さな商店街のような場所があった。

幼稚園に入るかどうかぐらいの僕はある日、母に連れられてそこに足を運んだ。

出かける前に、店に並んでいるおもちゃを欲しがってはいけないと釘を差されたのを今でも覚えている。たまには母のしたい買い物をゆっくりさせてやらなければいけないと、子供心に思ったような気もする。でも、そんな決心はもろくも崩れ去ることになった。

立ち並ぶテントの一つに、子供受けを狙ってかたくさんのおもちゃを店先に吊り下げて飾っているところがあった。その中に、当時大流行していた「キン消し」(キン肉マン消しゴム)があるのを見た瞬間、僕はそれが欲しくてたまらなくなった。

あれが欲しいと、ひたすらに泣き叫んだ。母は困っていた。騒ぎを聞きつけて駆けつけた店員のお兄さんは、快くその青いキン消しを釣ったテグスを切って、それを小さな僕に手渡してくれた。

そのときの嬉しさと感謝の気持ちは、40年近くが経った今でも忘れていない。

そして、そのときのキン消しこそ、タイトルにもあるスペシャルマンだった。

スペシャルマンと言えば、多分相棒カナディアンマンと並んでキン肉マン史上最弱と称される超人だ。作中での扱いは酷いもんで、未だに勝利すら描かれたことがないらしい。友人に好きな超人はスペシャルマンだと打ち明けて失笑を買った経験もある。それでも、大好きな、大切なキン消しのスペシャルマンは、僕にとって最高のヒーローであり続けたし、これからもずっとそうだと確信している。

スペシャルマンのキン消しは、今でも実家の物置に眠っている。自己満足に過ぎないだろうけれど、娘がもう少し大きくなったら父の宝物に触れさせてやりたいと思う。